元This Heat(ディスヒート)のドラマー、Charles Hayward(チャールズヘイワード)の1991年2月23日ロンドンにて行ったソロパフォーマンスライブの録音作品です。
ちょうど湾岸戦争が始まった直後のライブです。
この作品は、ディスヒートの2ndアルバム「Deciet(偽り)」のヴォーカルとポップさを取り去りメッセージ性を巨大化させたかのような強烈な音響作品です。
最初何回か聴いたときはもう一つピンときませんでしたが、久しぶりに聴き直してみて圧倒的な迫力で迫ってきました。
戦争に対する抗議の気持ちを込めて行われたライブのようです。
アルバムジャケットには、アルバムタイトル「Switch on War」の記述の下にこう表記されてます。
「MUSIC FOR THE ARMCHAIR THEATER OF WAR/ A UNIQUE AND ENTERTAINING SOUVENIR FOR YOU TO TREASURE AND KEEP 」
和訳ヘタですけど訳してみますと、
「肘掛椅子に座って戦争の鑑賞をする劇場のための音楽/ あなたが大切にとっておくユニークで愉快な記念の品」
これは逆説でしょうか?
戦争というおぞましい出来事も、我々はメディアを通して膨大な情報の一つとして取り扱っているにすぎないほど感覚が鈍くなっているように思えます。
何回となく落とされるその日の爆撃よりも目の前で起こる何でもないいざこざが恐怖に感じたりする。
上記和訳は、「あんたは気楽なもんだぜ!戦争は怖い怖い。と言っておきながら自分の人生の出来事の一ページに刻まれる可能性がないもんだから他人事のようにはたで眺めていやがる!」と曲解してもいいのではないでしょうか?
このアルバムに収められた音響はかなりハードなもので、一曲目の「Crying Shame」。ひどい恥。ひどい不名誉。戦争という醜業を指しているのでしょうが、非常事態のような異様な音が地鳴りとともに鳴り続けます。
「Strong-Arm Dead-Line」に至っては神経が侵されてくるようなリズムが脳に捻じれこんできます。
「Pinpoint」鋭角でメタリックなヴォイスが、反復音響とともに延々続き、9分を過ぎた頃に残酷な表情をしたドラムが打ち鳴らされる。
反復音響との対比がお見事!
「Sweetheart」曲途中の突然のドラムの連打が息をのみます。
そして最後の曲、「Never Before」。
淡々とした音響が続きます。曲の最後の方でチャールズヘイワードのヴォイスが通常のヴォーカルの3分の1位の声の大きさで「so much,so many,so few,so much,so many,so few,so~」と説得力のある少々ダミ声
のヴォーカルが続きます。
こんな音楽を聴いてもいいのか。脳波が侵されるかも。
でも劇場のための音楽だから、ストップボタンを押せば安全なのです。
これも逆説でしょうか?
ストップボタンを押そうがチャールズヘイワードの音楽は、私の体の細胞のあちこちにその記憶をとどめてしまいました。
この音楽は、完全に私の魂の奥深くに浸みわたりつつあるようです。
まあ聴いてみてください。
傑作です。
1. Crying Shame
2. Strong-Arm Dead-Line (Fortinbras)
3. Pinpoint
4. Sweetheart
5. Never Before
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